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運動器の加齢性変化について

 人は誰しも年を取る。年行かば脚、腰、肩が痛むのは致し方ない。これは人の宿命なり。これを少し学問的に捉ると運動器(骨、関節、 靭帯や腱、滑液包、筋肉など)の退行変性によってもたらされる障害である。端的に言えば運動器の老化現象が占めるに至った。臨床症状は、疼痛であったり、変形であったり、あるいは動きが悪くなったり、力が出なかったりする。その程度は、これぐらいの痛みは年の功だからとすまし顔でいられるものから、夜間痛に睡眠を障害され、何か悪い病の前兆かもしれないと不安の念にさいなまれるものまである。そして、運動器が全般に一様に老化するのではなく、骨が主だったり、関節にきたり、靭帯や腱の付着部そして筋肉が障害されたりする。骨に関していうなれば、骨が弱くなったり、脆くなったり、消失したり、逆に硬くなったり、骨新生がみられたりする。その本態は、骨が吸収され骨が弱くなる骨粗鬆症であってり、関節の軟骨や骨が磨耗消失する変形性関節症による骨硬化現象であることもある。また、余分の骨が形成される靭帯骨化症や石炭沈着を引き起こす筋腱の付着部障害もある。このように同一個人であっても部位によって異なった老化現象が見られたり、入り交じったりする。即ち、個人差や性差があって、個々の中で程度の差が生じ、さらに色々な臨床像が交錯する。老化、変性の磨耗破壊が生じ、その上に生体の修復像が加わり、さらに環境因子がもたらす変化が微妙に絡む複雑な姿に出来上がる。

 日常もっとも頻繁に診察する機会のある加齢性変化は、ただ単に老化現象と 捉えれば退屈で代わり映えのない疾患と映るかもしれないが、そこに起っている変化は中々複雑怪奇で興味津々である。

( 白岡 格 )