東温市医師会

ホーム > ドクターの健康百科 > 小児の急性鼻炎と中耳炎

小児の急性鼻炎と中耳炎

 お祖父さんお祖母さんが子供の頃には、黄色や緑色の鼻をたらし、てかてか光る袖口の着物を着ている子が多かったのではないでしょうか。

 最近の子供達にそんな『はなたれ小僧』がいなくなったと思いませんか。鼻炎をこじらせて慢性副鼻腔炎(蓄膿症)となって、手術が必要となることは随分と少なくなりつつあります。怖い病気=蓄膿症は死語になりつつあります。鼻炎と関係の深い中耳炎も、手術が必要となるような慢性中耳炎はめっきりと少なくなりました。衛生に対する意識の向上、近くに病院が増えたこと、よく効く抗生物質を気軽に使えるようになったことなどがその理由だと思われます。しかし、感染症が減ったわけではありません。鼻水をすすっている子供はたくさんいますし、多くの小児が小学校入学までに中耳炎を経験しているという調査結果もあります。

 低年齢からの集団保育が一般的になってきている現在ではウイルスや細胞への感染の機会はむしろ増えていると言えます。急性鼻炎は、“鼻風邪”といわれるようにウイルスの感染で始まるのですが、つづいて細菌の感染を起してくることがあります。鼻汁の様子を観察していますと、水様性であったものが、粘りのある色のついた鼻水へと変化することがあり、この時点が細菌感染を起してきた時だと考えています。抗生物質が必要になる頃合いです。鼻汁の症状を医師に伝えることが治療に役立ちます。

 中耳炎は鼻炎に併発して起こってきます。鼻腔と中耳腔は耳管というトンネルでつながっています。小児の耳管は太く短くその機能も不完全で、鼻に起こった感染が波及しやすいのです。中耳炎は痛み、発熱、耳漏といった症状だけとは限りません。訴えのない滲出性中耳炎という病態があります。むしろ放置され慢性化する可能性があります。鼻炎を起こしている小児では鼻の治療といっしょに鼓膜の観察をつづけることが大切です。急性鼻炎の治療は、初期のウイルス感染の時点での鼻のクリーニングが効果があり、これだけで治療することもできます。耳鼻科での鼻処置を勧めます。抗生物質は2次的に起こってくる細菌感染の予防として初期から用いられてきましたが、耐性菌の増加に伴って効きが悪くなっています。大切な薬ですから的確に用いられなくてはなりません。中耳炎は多いように思います。鼻処置や抗生物質で軽快しない場合には鼓膜切開が行われます。

 小児の急性鼻炎、中耳炎は小学校に入学するごろから起こしにくくなります。それまでの間、気長に根気よく付き合っていく病気のように思います。

( 八木 拓  )