東温市医師会

ホーム > ドクターの健康百科 >屈折異常の新しい捉え方(波面収差解析)

屈折異常の新しい捉え方(波面収差解析)

 目の屈折異常には遠視、近視と乱視があります。主に目の黒目(角膜)と瞳のすぐ後ろにある水晶体がレンズの働きをしていて、遠方からやって来た光線を眼底の網膜上の一点に収束させ、それを焦点といいます。その焦点が網膜の後ろにできる場合を遠視、前方にできる場合を近視といい、目のレンズの縦方向と横方向による焦点(線)の位置が異なる場合を正乱視といいます。眼科臨床では遠視と近視は球面レンズを用いて矯正し、正乱視は円柱レンズで矯正します。しかし目のレンズの例えば角膜の形状異常などによる屈折面が不規則な不正乱視は定量的に数値として捉えることがむずかしく、めがねで矯正することはできません。

 近年新しい検査器機の開発と臨床応用が進み、波面収差解析によって不正乱視を高次収差として定性的、定量的に評価できるようになりました。収差とは収束するはずの光が一点に収束しない「ずれ」をいいます。上記のめがねで矯正できるものが2次収差で、矯正できない3次以上のものが高次収差です。実は球面レンズにもレンズ周辺部を通った光線は焦点に収束しないという球面収差があり、これも高次収差です。収差があると像がくっきりと鮮やかには見えません。

 波面収差解析により、ヒトの目は加齢とともに全体として高次収差が増し、それは主として水晶体の球面収差が変化するためと分かってきました。角膜のそれは20歳台でも50歳台でもあまり変わらず十(プテス)の収差を持っていますが、水晶体は20歳台では−(マイナス)の収差で、次第に負を正に転じて50歳台では十(プラス)に増加します。したがって若い頃は+、−で打ち消し合い、目全体として収差がほとんどなく高品質でシャープな像が得られますが、加齢とともに十、十で加算されて収差が増し、霧視を引き起し鮮明さが低下していきます。

  器機や手技の進歩により白内障手術では良好な術後視力がほぼ約束されるようになった今日、一層良質な視機能を得るために目の中に移植する眼内レンズにも、術後に目の球面収差が少なくなるような非球面レンズを選択するケースも増えてきています。

( 生島 操 )