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気胸、胸膜炎、胸膜中皮腫について

 前回の肺がんの話に引き続いて、今回は胸膜(肋膜)の病気、またその中でも、胸の痛みでおこる病気について簡単に述べてみます。

 肺から胸腔(肺の入っている肋骨で囲まれた空間)に空気が漏れる気胸という病気も最近増えてきています。若い男性(女性にも起こりますが)、あるいは呼吸器の病気をしたことのある年配のかたに見られることが多い病気で、はじめに胸の痛み、続いて息が苦しくなるという症状をよく聞きます。この病気が起こるとき出血を伴い血液と空気が胸の中にたまる血気胸という状態になることもまれにあります。この病気は命に対する危険さという面では軽い病気ですが元々肺に病気のある人や、両方の胸に同時に起こった場合や、出血の量によっては命の危険を伴うことがあります。

 この病気の原因は、手術の時に見たり、胸のCT検査で見ると、肺の表面に風船玉(ブラという)ができていることがわかります。しかし、このブラができる原因についてはわかっていません。たばこも原因の一つの因子にあげられています。この病気の治療については空気を体外に出す(脱気、ドレナ−ジ)方法や手術でより根本的にブラを取り去って治す方法もとられます。

 また、肺炎などの肺の病気やその他の病気に伴って胸の中に水(胸水)がたまる胸膜炎という病気があります。この病気も最初胸の痛みでわかることがあります。このほとんどは薬で治りますが、治療が遅れたり、治療の反応性が悪いときには膿胸という膿が胸にたまる病気になります。こうなると手術での治療が必要になる可能性が大きくなります。早い時期なら胸の中を掃除する(掻爬、清掃術)ことでほとんど跡形もなく治ることがあります。

 また、最近、話題になっていた、アスベストに関連する胸膜中皮腫という病気についても、今後、数年単位で増加する可能性があります。原因不明の胸膜炎(胸腔に水がたまる)から診断されることもよく経験されます。この病気の起こりにも胸が痛むことがあります。この病気は治療が難しい病気の一つに挙げられます。抗がん剤を使った後に手術することや、加えて放射線治療を行うことでの治療方法を現在模索中です。手術は肺と胸膜(肋膜)をひとかたまりにして切除することが必要となります。

( 中村 憲二 )