東温市医師会

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慢性硬膜下血腫について

 頭部外傷後の1ヶ月前後してから見られる疾患に慢性硬膜下血腫があります。頭蓋骨のすぐ内側にある硬い膜(硬膜)と脳(実際にはくも膜)との間に、ユックリと時間をかけて大きくなった血の塊(血腫)のことを慢性硬膜下血腫と言います。

 脳の萎縮がみられる高齢者は、もともと硬膜下腔に空間を作りやすいためこの血腫を形成しやすくなります。したがって60歳以上の方は特に注意が必要です。外傷直後のCT・MRI検査で、わずかに硬膜下血腫があり徐々に拡大する場合もありますが、全く異常がない場合でも1ヶ月前後して徐々に出現・形成してきます。そして、このような血腫を作る場合の外傷の程度も、様々です。転倒して強打した場合だけでなく、よろめいて壁や柱にぶつかったという程度や、尻餅をついたなどの全く頭部を打撲していない場合でも起こることがあります。そのため、頭痛などで検査をして血腫の存在を指摘されてから、『そう言えば1ヶ月前にこんなことがありました。』と思い出されるような軽度の外傷の場合や全く思い当たるような出来事のない場合もあります。

 いずれにしましても、軽い外傷でも起こることがあることを理解しておかなければなりません。一番多い症状は、頭痛です。朝の起床時や横になっている時に頭痛が強く、立ったり座ったりすると少し楽になる特徴があります。さらに血腫量が多くなりますと、手が挙がりにくい・つまずきやすい等の手足の麻痺がでてきます。最近何となくボーッとして寝てばかりいる、認知症が進行したという訴えで家族に連れられて来院されることもあります。さて治療法ですが、血腫量が少ない場合は、自然に消失することが多いため何もせず経過観察します。血腫量が多く、すでに麻痺などの症状が見られる場合には手術(穿頭血腫洗浄術)を行います。局所麻酔にて頭蓋骨に穴を開けて血腫を洗い流す比較的簡単な手術でほとんどの場合治ります。頭部外傷後の1ヶ月前後には、ぜひこの疾患を思い起こしてみてください。

(中野 敬)