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増える加齢黄斑変性 −進歩する診断と治療−

 加齢黄斑変性(AMD)は、欧米では中途失明原因の第1位ですが、日本でも50歳以上の男性を中心に増え、最近の報告では第4位になっています。食生活の欧米化が一因と考えられていますが、詳しい原因はわかっていません。

 AMDは、加齢などで眼底の網膜中心部にある黄斑に障害が起こる病気です。症状は、見ようとする部分がゆがんだり、黒っぽく見えたりします。AMDには、滲出型と萎縮型の2つがありますが、治療の対象になるのは滲出型です。滲出型では、網膜の裏側にある脈絡膜から、加齢によって老廃物が蓄積した黄斑網膜下に新生血管が生えてきます。新生血管はもろく、出血やむくみを生じるために、物が見えにくくなります。AMDの検査には通常の眼科的検査のほかに、蛍光眼底造影や光干渉断層計(OCT)を用います。前者は、フルオレセインあるいはインドシアニングリーン(ICG)という蛍光色素を静脈注射し、脈絡膜新生血管(CNV)などの病変を抽出します。ICG造影が普及した結果、日本人では滲出型の約40%がCNVではなく、脈絡膜から生じたポリープ状脈絡膜血管症(PCV)によることがわかりました。欧米人では、10数%と推定されています。OCTは眼底に赤外線を当て、反射した波を解析して、網膜の断面を描き出します。数秒で検査ができ、造影剤を使わないのでアレルギー反応の心配もありません。滲出型AMDの治療は、最近では光線力学療法(PDT)、ステロイドや抗血管内皮増殖因子(VEGF)抗体を眼部に注射する薬物治療、あるいはその併用が主流です。

 PDTでは、太陽光など強い光を避けるため入院し、光感受性をもつ薬を静脈注射します。薬が眼底の病変に選択的に集まったところで、レーザー光を照射し病変を壊します。これにより患者さんの約80%が1年後に視力の維持改善を得ているとの報告があります。ただし、50〜60%が維持です。欧米での結果は日本ほど良くなく、あまり行われなくなっています。欧米人にPCVが少ないことと、日本での経過観察期間が短いためと考えられています。ステロイドや抗VEGF抗体はCNVの発生、成長を抑制する薬で、眼球内外に直接注射します。抗VEGF抗体は、欧米では既に治療効果をあげていて、日本でもその1つが昨年10月に承認され、保険適用になりました。今後の治療効果の評価が待たれます。

 加齢黄斑変性のこれらの診断と治療は、数か月毎に繰り返す必要があります。そのため毎回の検査と追加治療は、時間的および身体的負担の少ない、蛍光眼底造影からOCTへ、さらにPDTから眼局所薬物治療へと重点がシフトしていくものと思われます。

(生島 操)