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今時の骨折事情

 骨折とは何らかの原因で骨の生理的連続性が失われた状態。骨折は骨の状態と外力の程度と作用の仕方から、1回の外力で正常の骨に起こる外傷性骨折、骨に基礎疾患を有しわずかの外力で骨折する病的骨折、軽微な外力が繰り返し作用し正常の骨に発生する疲労骨折とがある。さらに、基礎疾患を有する骨に小さな外力(日常生活動作)が同一部位に繰り返し作用して生じる脆弱性骨折がある。現在は高齢化社会、基礎疾患として加齢と伴に骨量が減少する骨組髭症が問題になってきた。脆弱性骨折の特徴は、外傷歴がなく、発生時は日常生活が可能であり、初診時のX線検査では正常のことが多いことなどである。

  ケガをして痛くてX線検査で診断できるのが骨折、それが一般的概念である。しかし、外傷歴が無い、痛くもない、X線像が正常な骨折もある。外傷歴が無い骨折を特発性骨折、脆弱性骨折、痛くない骨折を形態骨折、骨梁骨折、X線像に骨折線が見えない骨折を不顕性骨折と言う。特発性とは原因が無いと言う意味で、外傷が無く生じた骨折で基礎疾患が潜んでいる。脆弱性骨折は基礎疾患を有する疲労骨折の一種で、放置されれば完全骨折や偽関節になることがある。形態骨折はX線検査を受け初めて診断される。高齢者の円背は椎体変形によるが、本体は骨組握症による圧迫骨折で、この骨折に相当する。ちなみに疼痛のあるものを臨床骨折と言う。骨梁骨折は、外傷歴やX線上の骨折所見が有ったり無かったりするが、通常は痛くない。診断にはMRIなどの補助診断法が必要である。不顕性骨折は基礎疾患には関係がなく、外傷歴が有り初診のX線検査で骨折線がみえない骨折である。以上の骨折は基礎疾患の治療が大切で、手術が必要となる事もある。

  骨折は最も知れ渡った外傷の一つであるが、骨折と一口に言っても様々な臨床像があり、診断治療は一様にはいかない。初診時に大丈夫と高を括っていると、再診時に骨折があからさまになり大恥をかく羽目にあう。ヘボ、ヤブと言われても仕方がないが、それはそれ中々難しいものなのである。骨折を取り巻く諸問題は刻々変化するから診断治療の再教育が必要であり、今時の骨折事情を広く開示することも不可欠である。

(白岡 格)