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ワクチンを考える(その1)―新型インフルエンザ―

 昨年の春以降日本全国を狂騒状態にした新型インフルエンザ(H1N1)ですが、8月中旬に流行入りし11月末に流行のピークを迎えたあとは減少し、3月31日厚労省は第一波が事実上終息したとの見解を示しました。これまでの推定患者数は約2068万人で未成年が7割強を占めました。入院患者は17640人、死亡者は198人で、人口あたりの死亡率は世界的にみて最も低かったようです。

 新型インフルエンザの診療では医療機関は発熱外来の設置など対応に追われ大変でしたが、ワクチン接種に関しても優先対象患者のふりわけ、接種日の調整、10ml製剤の使用等で現場は多大な労力を使いました。

 国産ワクチンは3900万回分が出荷され1610万回分流通在庫があるということですから2290万回分が使われたことになります。接種を受けた人は1900〜2200万人でしょうか。輸入ワクチンについては、国はスイスのN社と英国のGSK社との間に9900万回分(1126億円)購入の契約を結びました。既に5000万回分が納入されているようですが、実際に国内で使用されたのはたった1700回分です。N社からの234万回分(約30億円)は3月末使用期限を迎え廃棄されました。GSK社とは32%に当たる2368万回分を解約することで合意、N社との一部解約は交渉中だそうです。未使用分は備蓄に回されますが、使用期限(N社半年、GSK社1年半)内にどれだけ使われるか疑問です。

 当初2回必要とされていたのが1回で効果があることがわかったことなど不測の要素があり、多くのワクチンが残ってしまったことは結果論ですので、一概に国を責めることはできませんが、製造から承認までの手続きに時間がかかったために使用開始が流行に後れをとったことは問題です。接種の対象については、学校等が地域への流行拡大のもととなることを考えると、園児児童生徒学生への接種をより優先したほうが良かったのではないかと思います。予防接種はかかりつけ医での個別接種が原則ですが、新型の場合は、学校での集団接種を導入するほうが即時性、マンパワー、効率の面でもよいのではないかと感じました。

(高原 完祐)