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高血圧診察室でのお話

 高血圧の自覚症状をご存じでしょうか?

 頭痛や肩こり、フラフラ感などを思い浮かべる方が多いのではないかと思います。でも高血圧は「無症状」であるが正解です。

 しかし、家庭血圧計をお持ちの方は“今日は少し頭が重くしんどい”と思い、血圧を測り、いつもより高いので“ああやっぱり血圧が高いので調子が悪いのだ” と自分で思われたことはありませんか。確かにこのようなことはよくあるので、血圧の症状として頭痛、頭重感などがあると勘違いすることになります。医学的な解釈は、“頭が重くてしんどいような時は血圧も上がっていることが多い”です。逆に“今日は調子もよいから血圧の値もいいはずだ” と思い血圧を測り、いつもより高い血圧値が出てガッカリすることがあるのは高血圧が無症状なためです。

 毎日の血圧値をその日の運勢のように、血圧が低いと安心し、少し高いと脳卒中を起こしやしないか心配し過ぎる方もいます。血圧は変動するものですので、いつもより血圧が高いからといって家で寝ている必要はありません。血圧を多くの回数測定することで、より正しい治療選択が出来ますので、血圧値に一喜一憂せずに、血圧は上がったり下がったりすることを自覚して、淡々と血圧手帳などに記録しておいてくださると治療に非常に役立ちます。

 高血圧があっても無症状で元気なのになぜ治療が必要なのでしょうか。それは高血圧が“サイレントキラー”と呼ばれるように、無症状ですが、放置しておくと脳卒中や心筋梗塞で倒れて、半身不随の麻痺が残ったり、命を落とす危険なものだからです。余談になりますが、現在のように腕で血圧測定する方法が発表されたのは1896年のことです。血圧が測定できるようになっても高血圧は無症状ですからその怖さはすぐには分かりませんでした。約100 年前に高血圧の危険性に最初に気付いたのは生命保険会社でした。その調査の中で血圧の高い人はより脳卒中などで倒れるので注意が必要だと判明したのです。

 高血圧の治療として塩分を控え、適度の運動をすることが大切です。そして生活習慣の改善をしても血圧が高い方は、薬で下げる必要があります。高血圧の薬はずっと飲まないといけないからと躊躇する方がおられます。しかし高血圧を放っておくと脳卒中などの病気になるわけですから、血圧の薬は“これを飲んでいると元気に長生き出来ます” というサプリメント感覚で長く飲んでもらうことが大切だと思っています。

(岩田 猛)