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吐き気と頭の病気

 吐き気には、いろいろな原因があります。もちろん、最も多い原因は、胃腸疾患でしょう。しかし、頭の病気でも吐き気を来たすことはよく知られています。頭を打撲した後に、打撲部や頭全体の痛みに加えて、吐き気があると危険信号です。頭の中に、出血を来たしている可能性があります。しかし、小児の場合は、出血がなくても一時的に吐き気がしたり嘔吐することがあります。慌てずに、意識状態はどうかなどよく観察して受診して下さい。

 眩暈に伴う吐き気も、しばしば経験します。車や船に酔った時に吐き気がするのと同じ、と考えてよいでしょう。ところで、外傷や眩暈を伴わない時の吐き気には、どのような危険が隠れているでしょう。まず、麻痺症状がある場合はどうでしょう。吐き気と頭痛があれば脳出血、頭痛がなければ脳梗塞を疑い、詳しく検査します。

 次に、麻痺症状がなく発熱を伴う場合、多くは風邪などの感染症を疑いますが、吐き気・嘔吐が続き次第に意識障害がみられると、非常に危険な脳炎や脳膿瘍の可能性があります。更に、麻痺や発熱がなく、頭痛・吐き気の場合はどうでしょうか。たとえば、脳腫瘍が原因となります。この場合は次第に頭痛の回数が多くなり、また持続する時間も長くなり、特に朝起きた時に痛くなる傾向があります。

 さて最後に、私たち脳外科医が最も注意を払い、恐れる疾患です。いきなり頭痛・吐き気( 多くは嘔吐します) をきたす疾患、即ちクモ膜下出血です。脳血管にコブ( 脳動脈瘤) が出来、次第に大きくなり突然に破裂して約3 分の1 の人が亡くな る危険な病気です。 『何時何分から頭痛がする』と言えるぐらい明確に突然に頭痛が起こり、吐き気・嘔吐が続きます。数分以内で治まり、その後吐き気や嘔吐を伴わない頭痛はまず除外してよいでしょう。このような強い頭痛の時は、我慢せずにすぐ脳神経外科のある病院を受診して下さい。クモ膜下出血は、前もって脳動脈瘤を発見することで予防できます。そのために一度は、頭部の検査を受けていただくことをお勧め致します。

(中野 敬)