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がんになっても自分らしい生活を

 平成19 年4 月にがん対策基本法が制定された後から、新聞や雑誌で緩和ケアに関する記事や、がんになっても自分らしく生活する姿をテーマにしたドラマや映画が上映されています。緩和ケアが注目される理由は、がん対策基本法第16 条でがん患者の療養生活の質の維持向上が謳われ、緩和ケアについて明記されたことによります。緩和ケアをがんの治療ができない終末期医療と理解されている方も多いと思います。緩和ケアは治療早期から提供され、がんをはじめとする生命の危機が及ぶ疾患により障害された、患者と家族の生活の質を改善させることを目指すケアであると考えられています。

 がんによる苦痛は次のようなものがあります。第1 に身体の痛みです。がんが直接原因となる痛み、治療に伴う痛みなどがあります。第2 にうつや不安などの精神症状、第3 に経済的なことや療養先に関する社会的とされる痛み、第4 にがんが生命に関わる病気であるために生じるスピリチュアルな痛みなどがあります。家族にも、様々な心配や不安、患者の介護、仕事量の増加、家族間の役割の変化等により負担がかかります。患者と家族は、周囲に配慮する結果、辛さを我慢し、苦痛を増幅する傾向にあります。がんによる苦痛は、複雑であり患者毎にその内容と強さが異なります。患者が自分らしく生活することを目的に、家族を含んだ総合的な痛みに対するケアが緩和ケアです。

 病状の進行により、患者はできていたことが突然できなくなります。体を動かすこと、食事ができない、夜が眠れないなどの症状を示します。体の痛みで自分らしい生活ができない時には、モルヒネをはじめとする様々な薬剤を投与します。モルヒネを処方されたのは終末期だからであると誤解する人もいますが、自分らしい生活を送ることを目的に治療早期においても必要に応じて投与します。がんになっても自分らしく過ごす生活のために“緩和ケア”というものを考えてみませんか。

(坪田 信三)