東温市医師会

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ストレス心筋症(たこつぼ型心筋症)について

 ストレス心筋症ってご存知でしょうか?医学的には'たこつぼ型心筋症'との呼称が正確かもしれません。心筋症とは心臓の筋肉に何らかの異常が起こり、そのため心臓本来のポンプ機能が障害される病態を指します。心臓の筋肉がやせ細ってくる拡張型心筋症と逆に太ってくる肥大型心筋症に大別され、いずれも原因不明なのですが、徐々に進行し心臓の働きが著しく損なわれることもあります。

 一方で、ストレス心筋症は(こちらも原因不明ですが)、日常生活における精神的ストレスによるホルモン(カテコールアミンと呼ばれています)の増加が発症に関係していると考えられています。心筋症の発症早期に心臓の尖端部分がほとんど動かなくなることより、心臓の動きがたこつぼに似ていることから'たこつぼ型心筋症'とも呼ばれています。障害された心臓のポンプ機能は2.3週以内の期間で回復するため、急性期の診断・治療が非常に重要と考えられています。

 私もこれまでに10名以上の'たこつぼ型心筋症'の患者さまを診療させて頂きましたが、中には胃カメラの度に再発する患者さまも経験しており、ストレスの回避や精神面のケアも含めた治療が必要と思われます。日本では1995年の阪神・淡路大震災、2004年の新潟県中越地震の際、被災者の間で高率に発症したことが報告されています。今年、両震災の規模を上回る大地震が東北・関東地方を襲いました。読者の皆さまも、メディアから流れてくる画像・情報に心打たれる毎日かと思います。この未曽有の大災害の中、被災地方で'たこつぼ型心筋症'が高率に発症することが懸念されています。先にも述べましたが、この病気は急性期の診断・治療が重要になります。人的パワー・医療物資が不足するなか、同疾患が2次的災害となり尊い人命が失われないことを祈念しています。

(舩田 淳一)