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認知症の治療と対応

  一度獲得した知能が低下することを認知症と言います。現在日本には240万人の認知症の患者さんがいると言われています。愛媛県の人口が141万人、香川県の人口が99万人ですから、四国の北半分の人口と同じ方が認知症ということですのでこれは大変なことです。昔は大家族が多く、家族内でお世話をすることで折り合いもついていたのですが、現在の社会情勢、家族構成を考えると、そうも言ってはいられません。

  認知症の治療は大きく薬物療法と、それ以外の非薬物療法に分かれます。まず薬物療法ですが、世界中で研究がなされており、最近アルツハイマー型認知症の薬が相次いで日本でも発売されるようになり、日常診療でもつかわれるようになってきました。アルツハイマー病では脳内にアミロイドという不思議な蛋白の沈着とともに神経細胞が減ってきて、神経細胞間の連絡がうまくいかなくなって認知症がおこります。特に記憶に関係する物質、アセチルコリンの補充を目的に薬品は開発されました。今まではアリセプトという1種類でしたが昨年からはレミニール、メマリーに加え、皮膚に貼るタイプのイクセロン・リバスタッチも使えるようになってきました。各々特徴があるようで、認知症の中でも意欲の少ない方にはこのタイプ、イライラしたり、攻撃的な方にはこのタイプなど使い分けもできるようになってきました。ただ、これらの薬剤は認知症そのものを治す薬ではなく、あくまでも補充療法にすぎません。病気の進行を止めてしまうことは現在では困難です。そのため、様々な認知症の周辺症状に対し、きめ細やかなそのほかの薬による対症療法も必要です。

  薬以外にも古い写真などを見ながら昔のことを思い出す回想療法、音楽療法、園芸療法、作業療法、理学療法など様々な治療法の試みがなされています。介護保険のサービス事業者にはそのような療法を取り入れているところもあります。

  また、患者さんを取りまく環境、対応はとても重要です。物忘れが進行すると、今まで分かっていたものが分からなくなり、覚えたてのものも忘れてしまい、患者さんはとても不安になり、取り残されたような孤独な気持ちになります。熱のある子どもを「熱がある」と言ってしかる親はいません。認知症になった御両親が物忘れをしたと言って決して責めてはいけません。家族の方の優しい言葉は何よりも励みになります。

(池川 眞一)