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クモ膜下出血を予防しよう!

  脳に突然起こる病気の総称として、脳卒中という言葉があります。その脳卒中の75% を血管閉塞による脳梗塞が占めます。そして、10%が脳内の血管が破裂して起こる脳内出血、残りの数%がクモ膜下出血です。

  クモ膜下出血は、頭蓋骨と脳表面との間に存在するクモ膜下腔に出血する病気です。今回は、その大部分の原因である脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血について説明致します。

  クモ膜下出血をきたすと、『これまでに経験したことの無い』『金槌で殴られた』ような激しい頭痛を自覚します。そして、出血量によりその後の経過は大きく変わります。最初からかなりの出血だと、残念ながら即死または病院に到着するのがやっとでしょう。それ以下の量では、持続する激しい頭痛に加えて嘔気・嘔吐が見られます。出血が極少量の場合は、突然頭痛がしたものの多少気分が悪いだけで、普段通りに仕事をしてから受診される方もおられます。脳内出血を伴わない限り、クモ膜下出血は麻痺の無いことが特徴と言えるでしょう。

  出血量は、症状の程度を左右すると同時に、その後の経過にも大きく影響します。例えば、一度破裂した動脈瘤は、比較的早期に再破裂することが多いので、開頭手術によるクリッピング術や血管内手術による対応がなされます。そして、再破裂を予防した後、必要に応じて脳血管れん縮と言われる脳梗塞を引き起こす病態や、頭蓋内に髄液が溜まる水頭症に対しての治療が行われます。

  この様に、クモ膜下出血は一度発症したら、極めて重篤な状況から完全治癒まで様々な経過を辿ります。しかし、もしも出血する前に、即ち未破裂の状態で治療できたら、その経過は格段に良い事はご想像いただけるでしょう。脳動脈瘤を未破裂の状態で発見するには、MRI(磁気共鳴映像法)による血管像が、検査方法としては最適です。MRIも、閉所恐怖症の方でも検査可能なオープン型の装置もあります。まず、勇気をもって検査を受けてみてください。

(中野 敬)