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骨粗しょう症と生活習慣病

  最近の整形外科の話題、つまりよく開かれる講演会は慢性疼痛・骨粗しょう症等です。中でも骨粗しょう症の最近の研究の進歩は目覚ましいものがあります。私が医者になった昭和56年頃の整形外科の教科書をひもといてみると、骨粗しょう症は719ページの中のたったの4ページでした。現在はまるまる一冊の本が書かれています。どれほど進歩したか単純によく分かると思います。

  最近では、生活習慣病との関連が指摘・注目されてきています。糖尿病、脂質異常症、高血圧、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患、睡眠時無呼吸症候群などで、骨粗しょう症の危険性が高くなるというものです。骨の代謝などの研究が進み、例えば糖尿病では骨の密度はむしろ高くなるのですが、骨の質が悪くて骨折しやすいといったことが分かってきました。つまり、以前は骨の強さは骨の密度によると考えられていました。でも骨の密度は高いのに骨折してしまう人があり、なぜか?と研究していくと、骨の質が関係していることが分かってきたのです。

  骨は構造的に鉄筋コンクリートのようになっています。コンクリートにあたるものがミネラルつまりカルシウムであり、鉄筋にあたるものがコラーゲンです。粗悪な鉄筋を用いた鉄筋コンクリートの構造物の耐震強度は低下します。骨の強さも同じです。この鉄筋であるコラーゲンは、コラーゲン同士が「架橋(鉄筋同士を結びつける梁にあたる構造体)」という橋渡しで結合してコラーゲンの繊維となっています。この架橋にいいもの(善玉)と悪いもの(悪玉)があるということです。この悪玉架橋となる、つまり粗悪な鉄筋となる原因として、生活習慣病における高い血糖、酸化ストレスの増加、ビタミンB6・B12不足、葉酸の不足などが関係していると考えられています。

  生活習慣病で治療されている方は一度骨粗しょう症の検査をしてみることをおすすめします。

(西本   章)