東温市医師会

腎臓の涙

  みなさん、腎臓の涙ってご存知ですか?実は、涙とは蛋白尿のことです。人の腎臓は、2つありますが、この2つの腎臓に、約200万個の糸球体と言われる血液のろ過装置があります。ただし、加齢、高血圧や高脂血症、糖尿病による動脈硬化が進むと、この糸球体が徐々に壊されます。

  腎臓という臓器は、非常に我慢強い臓器で、少々泣いていても(蛋白尿が出ていても)、頑張って働いてくれます。200万人の従業員が100万人になっても、残りの100万人の従業員が、残業や早出をしながら一生懸命、尿を作り、老廃物をろ過してくれます。ただし、この状態が長く続くと、さすがの腎臓も涙を流すようになるのです。糸球体は、一度破壊されると決して元には戻りません。放置すれば、気づかぬうちに、末期腎不全の状態となり、透析療法や腎移植を受けるしか生命を維持する方法がなくなるのです。そればかりか、腎臓病のある人は、虚血性心疾患や脳血管疾患を合併する率が高いと報告されています。

 最近、慢性腎臓病に対するガイドラインが改正されました。このガイドラインでは、重症度を、血漿ろ過量(GFR)と蛋白尿あるいはアルブミン尿を疾患別に組み合わせ、末期腎不全、心血管死亡発症のリスクを色分けして区分しています。いうなれば、糖尿病および高血圧やそのほかの腎炎等による慢性腎臓病は、現代の国民病と深くつながっているということです。ですから、腎臓を大切にするということは、長生きにつながるということになります。まずは、蛋白尿がどれくらい出ているか検査することから始まります。蓄尿でなくても、随時尿で簡単に、1日の蛋白尿量を推定できます。検尿ですから、痛くも何ともありません。また、蛋白尿が、1日0.5g以上出ていれば、どのような疾患が、隠れているか、精密検査を行い、その患者さんに適した治療を選択できます。現在は、いろいろ有効な薬もありますし、食事療法や生活習慣を変えるだけでも非常に効果がある場合があります。やるべきことを、しっかりと行えば、必ず腎臓の涙は止まります。

  みなさん、腎臓の涙が出ていないかどうか、一度検査してみませんか?

(島本   憲司)