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糖尿病の新薬「選択的SGLT2阻害薬」について

  肥満した糖尿病患者で体重を減らすための方法として注目されているものに、食事療法では「糖質制限」や「野菜から先に食べる」などがありますが、薬で体重を減らすことができる新薬がこの4月から使えるようになりましたのでご紹介したいと思います。

  それはSGLT2阻害薬というものです。腎臓では糸球体から血中のブドウ糖が濾過されますが、近位尿細管でほぼ100%再吸収されて普通は尿に糖は下りません。健常人では血糖が180r/dlを超えると尿に糖が下りますが、糖尿病の人ではこの閾値が220r/dl位に高くなっており、このことが高血糖をさらに悪くする一つの原因と考えられています。SGLTというのは尿細管にあるブドウ糖を再吸収するのに働くトランスポーター(輸送担体)で1と2があり、2がその90%以上を担っています。このSGLT2に結合してブドウ糖の再吸収を阻害するのがSGLT2阻害薬で、この薬により閾値がぐっと下がり、血糖が正常の状態でも尿に糖が下りるようになり、1日に70−100gの糖が排出されます。これによりカロリーが1日280−400kcal失われ、血中のインスリン値が下がり、体重が平均で2−3s減少します。糖尿病の薬でこれまで体重を減らせるものはGLP-1受容体作動薬という注射薬のみでしたので、体重を減らす飲み薬が使えるようになったことは朗報です。腎機能が悪いと効果が落ちるという面はありますが、使えば確実に空腹時および食後血糖、HbA1cが下がり、糖毒性が取れてβ細胞機能やインスリンに対する感受性が改善します。血圧や中性脂肪、尿酸値を下げ善玉のHDLコレステロールを上げる作用もあります。ただ、副作用として浸透圧利尿で糖と一緒に水分が失われるため脱水になりやすく脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まることが危惧されており、使用時には十分な水分補給が必要です。またカンジダ(かび)による性器感染症が増えるといわれています。期待の大きい薬ですが、新しい薬なので医師も患者も注意して慎重に使用することが大切です。

(高原   完祐)