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フレイル:健康寿命のためには貯金より貯筋?

人類の歴史上初めて、我が国は65歳以上の高齢者が人口の1/4を占める「超高齢化社会」を迎えました。しかしながら、街を眺めてみましても、弱った年寄りだらけで国が滅びる、といった深刻さはあまり実感できません。最近の医学的データによりますと、高齢者の身体機能、精神知的機能がこの10-20年の間に約10歳若返っているとのことです。そういえば、私も昨年還暦を迎えましたが、子どもの頃見た還暦を迎えた方より、ひいき目かもしれませんが、やや若い感じもします。栄養の改善、医学の進歩の影響があると思われます。この状態はさらに続くのでしょうか?残念ながら、それは難しそうです。医学の進歩により寿命は延びるでしょう。しかし、元気で過ごせる、いわゆる健康寿命は男性で約9年、女性で約13年、平均寿命より短いという報告があります。人生の最終段階で要介護状態になるかどうかは個人個人でずいぶん異なってくると思われます。

どうすればいいのでしょうか?最近医学会では「フレイル」という概念が盛んに提唱されています。フレイルとは英語のfrailty:加齢による恒常性の低下、虚弱のことです。体力的にも、精神、社会的にも虚弱な状態、フレイルを避けなければなりません。フレイルの診断基準は 1)1年間で4.5Kg以上の体重減少 2)疲労感 3)筋力の低下 4)歩行のスピードが遅い 5)身体活動が低い のうち3つが当てはまるものと言われます。歳をとって虚弱になるのは当たり前のような気がしますが、フレイルの研究者によると、決してそうではなく、未然に予防し、回復することができるというのです。そのためには、まず気持ちを若く保ち、運動、筋力の増強が必要であると述べています。たんぱく質ミネラルの豊富な食事、ストレッチや散歩や筋トレなどの運動が大切です。筋肉を鍛えて、筋肉を蓄える。いうならば「貯筋」をいたしましょう、というわけです。健康な寿命のため、フレイルを予防するため、貯金よりも貯筋を目指したいものです。

(池川  眞一)