東温市医師会

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不安と痛みについて

寒い季節がやって来ました。

身体のどこかが痛い…腰痛・頭痛・腹痛、痛みのバロメーターはその個人によって違うのでなかなか計れないのが現状です。痛みは周囲の人にも「キリキリ痛い」「ずーんと重い様な」など説明しても理解して貰えないことが多いものです。原因を探すために検査をいろいろと行って画像や数値に示しても、その数値と痛みの度合いは相関しないことの方が多い気がします。それは心に不安や緊張・ストレスがあると痛みはもっとひどく感じるからです。

例えばどこかの骨折があったとしましょう。これの場合原因ははっきりしています。しかし骨折の為に生活をして行くことでの不便を感じたりすると、治癒するまでの時間を待つことが難しい性格の人だと、イライラしたり「なぜ早く治らないのか」と不安になってきます。

他の例では痛みがあるのでいろいろな科で沢山の検査を受ける場合もあります。原因が分からないという不安、今の医学では解明されていない病気になっているのではないかという疑心暗鬼。いろいろな痛み止めや症状緩和のお薬を処方されてもあまり効果がないこともあります。不安になるから痛みがひどくなりその為にますます不安になるという悪循環に陥ってしまいます。

心療内科の範疇には「心因性疼(とう)痛」という病名があります。痛みというのは心が原因で起きる場合も結構あると診療の現場で感じています。心因性の場合には「なぜ痛みが起きているのか」を生育歴・現病歴・物の考え方・周囲の環境等様々な観点から考えて行きます。物の認識の方法を自覚して変更するだけでも痛みが緩和することも珍しくはありません。また治療の間には抗不安薬や漢方薬・抗うつ薬などの薬を使用することもあります。ゴールは少しでも早く痛みを緩和する・痛みから解放されることです。

身体と心は切り離せません。こんな病名や治療法があることを頭の隅に置いてみて下さい。

(宮内  奈穂)