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骨粗鬆症と骨折

骨粗鬆症とはご存知の通り、骨の密度が低くなり、スカスカとなって骨が折れやすくなる病気です。近年の高齢化社会において年々増えており、転倒し骨折すると寝たきりになる場合もあります。骨粗鬆症のある高齢者が、前方に転倒し手をつくと手首の骨折(橈骨遠位端骨折)、後方に転倒し尻もちをつくと背中から腰の骨折(胸腰椎圧迫骨折)、横方向に転倒すると股関節の骨折(大腿骨近位部骨折)を起こします。手首の骨折と股関節の骨折に対しては、手術を行うことが多いのですが、骨粗鬆症がひどいと、バラバラの骨折であったり、手術で使うスクリューがききにくかったりと、治療者側も苦労することが多いです。

多くの病気がそうであるように骨粗鬆症も予防が大事です。バランスの良い食事、適度な運動、日光浴などが勧められます。なかでも私は屋外での散歩をお勧めします。皮膚が日光(紫外線)に当たることによりビタミンDが活性化されます。ビタミンDは腸からのカルシウム吸収を促進したり、骨を強くしたりする作用があります。日焼け止めを塗ってしまうと紫外線をカットしてしまうので、塗らないで、日焼けしない程度に行うのがいいでしょう。また、歩くことで下半身の筋力の維持向上が期待できますし、心肺機能にもいい影響があります。骨にも適度な刺激が与えられ、骨を強くする作用も期待できます。

骨粗鬆症となってしまった場合でも、最近では副甲状腺ホルモンの注射剤など、骨密度を上げる新しい強力な薬も出てきています。副甲状腺ホルモン剤は、骨折した際の骨癒合を促進する作用もあります。ただし、一生のうちに1年半から2年間と、使用できる期間が決められています。

骨粗鬆症が心配な方は、病院を受診し骨密度を検査してみましょう。骨粗鬆症がある場合、多くの方は長期間の治療が必要となりますが、治療しない場合と比較すると骨折の危険性は低下しますし、骨折した際の治療もやりやすくなりますので、治療は続けてもらいたいと思います。

(濱本  雄一郎)