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本当に「五十肩」ですか???

1797年の江戸時代に発行された俚諺集覧(りげんしゅうらん)という書物の中に「凡、人五十歳ばかりの時、手腕、関節痛むことあり、程すぎれば薬せずして癒ゆるものなり、俗にこれを五十腕とも五十肩ともいう。又長命病という」と記載されています。江戸時代に五十肩の概念があったということです。現在でもみなさんは五十肩をほぼ同様の概念で使用されていると思います。なんとなくよくわからない五十肩ですが整形外科的には、「①肩関節の痛み・動きの制限という2つの症状を呈する。②レントゲン・ MRIなどの画像診断では明らかな異常がない」と定義されています。みなさんが考えている五十肩の間違いとして「①実は五十肩ではなく別の疾患の場合がある。②自然に治らないケースがある」があげられます。実際に肩が上がらないと訴えられる患者さんの7割は別の疾患です。腱板断裂、石灰沈着性腱炎、変形性肩関節症、上腕二頭筋長 腱炎などの肩の疾患、時に頚椎(首)の疾患の場合もあります。

一番多いとされているのは腱板断裂(肩を上げるために必要な4本の筋・腱を腱板といいます)であり、五十肩と思われている人の3〜4割が実は筋・腱が切れているのです。また五十肩は1〜2年程度で自然に治ると信じられていますが、実際は5割の人が痛みや動きの制限を残しているのです。

腱板断裂の治療としては保存的治療と手術的治療があります。保存的治療では内服、湿布の使用、または関節内注射を施行します。しかし長期的に考えると自然に腱板がつながることはないため、手術的治療を選択しなければならない場合もあります。 50歳代の人はもちろん、活動的な人が増えてきている現在では、70歳代でも手術適応となる場合もあります。五十肩と思い込みつらい日々を過ごしておられるようでしたら、一度病院を受診してください。

(山下  貢二)