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国民医療費と国民皆保険

我が国の国民医療費は、2017年に、およそ42兆円であり、2025年には、57兆円になると試算されています。しかし、その財源は、国や地方の公費からが38.9%もあり、保険料から48.8%、自己負担から11.6%です。財政赤字が続く中、公費負担の増額は限界であり、多少の保険料や自己負担の増額では賄えません。この為、1961年に始まり、WHOから世界一と評価された国民皆保険制度も、存続の危機を迎えています。

話は変わりますが、アメリカでは、高齢者と低所得者以外は、自分で医療保険に入らなければなりません。しかし、掛け金が高額であり、約4800万人もの人が無保険です。ちなみに、日本で虫垂炎の手術を受け入院すると、実質負担額は9万円程度ですが、ニューヨークでは、保険に入っていないと、およそ300万円かかるそうです。また、アメリカでは、個人の自己破産の60%は医療費が原因だそうです。驚くべきは、その80%が保険加入者なのです。保険は数えきれない程の種類があり、支払われる疾患が限られるなど、様々な制約があるからなのです。

日本の素晴らしい国民皆保険制度をご理解頂けたかと思いますが、その存続には、やはり医療費削減が不可欠です。一見矛盾するように見えますが、是非とも、高血圧・脂質異常症(高脂血症)・糖尿病は、科学に基づいた正しい治療を受けて下さい。放置して、脳卒中・心筋梗塞・心不全・腎不全になると、かえって生涯医療費は高くなります。また、日本人は、健康や安心を買う国と、他の先進国から批判されています。念の為・心配だからの(本来は不要な)、高額検査や科学的根拠のない治療も減らしましょう。医者も含め、全国民をあげて、医療費の増加を抑制したいものです。

(小林  卓正)