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膿胸について

膿胸という病気をご存じでしょうか。治療は難しい病気と思われがちですが、適切な時期に治療が行えれば、その限りではありません。膿胸とは肺が入っている胸腔という箱の中にうみがたまった状態です。肺炎、胸膜炎、肺や気管支からの空気もれといったものが原因となりますが、最も多いのが肺炎のこじれた状態として起こるものです。

肺炎になると約半数に胸水という水がたまります。これが肺炎随伴性胸水です。胸水は肺炎が良くなるにつれ吸収される事が多いのですが、吸収されず、炎症の過程でフィブリンと言う物質が析出してくると、水の中で沢山の間仕切りができます。これが急性膿胸のはじまり、被包化胸水の状態です。これがさらに進み急性膿胸となり、経過が長くなると慢性膿胸に進みます。

膿胸治療は紀元前、ヒポクラテスの時代から始まったとされ、歴史が長い反面、特に慢性膿胸では発展途上です。慢性膿胸の治療はなかなか困難なため、治療は慢性化を阻止する事を目標として行います。急性のうちに色々な手を使って肺を膨らまし、水や膿が貯まる空間をなくしてしまおうとします。まずは、胸腔ドレナージといって胸の中に管をいれ、貯まったものを外に出します。必要に応じ、胸の中を洗浄、フィブリンを溶かす薬剤を注入します。

ドレナージがうまくいかない、うまくいきそうにない際に手術を行います。近年多く行われるのが、胸腔鏡下膿胸掻爬術です。全身麻酔下に小さな傷から胸の中にカメラを入れ、胸腔内を掃除し、肺を膨らます手助けをします。掻爬術で治療が不十分であったり、すでに慢性膿胸である場合には保存的に経過を見たり、最終的に慢性膿胸の空洞に筋肉や大網といった臓器を充填(パッキング)したり、肋骨を外し胸郭成形術(胸をつぶす)など、患者の体力や空洞の状態に応じた治療が選択されます。適切な治療に関しては未だ議論がありますが、やはり専門医による治療が望まれます。

(湯汲  俊悟)