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目の病気?頭の病気?

白内障は、眼球を構成するレンズ(水晶体)が白く濁ることで、見えにくくなります。緑内障は、以前は眼圧の上昇が主因とされていましたが、最近では70%以上が正常眼圧であっても、視力低下・視野狭窄をきたす疾患です。いずれにしても白内障・緑内障とも目の病気です。では、黒内障はどうでしょう?これは、頸動脈の分岐付近が動脈硬化により細くなる、あるいは血液の塊(血栓)が形成され、目を栄養する眼動脈の流れが悪くなることによって起こります。一時的に片方の目が真っ暗になるなどの視力障害が起きますが、脳の病気(一過性脳虚血発作のひとつ)に分類されます。

頭痛は、頭の病気では、片頭痛・副鼻腔炎・脳腫瘍・クモ膜下出血など多くの疾患の主訴のひとつです。目の病気では、緑内障で視力低下・視野狭窄に気付かず、頭痛を訴えて受診されることもあり、鑑別が必要です。物が二つに見える、すなわち複視の場合はどうでしょうか?左右の眼球は、三つの神経が協調して上下左右同じ様に動くために、一つの画像として捉える事が可能となります。しかし、どの神経の障害でも左右の目の動きにずれが生じて複視となります。その他、眼球を収めている眼窩内の腫瘍により眼球が本来の位置からずれてしまった時や、眼窩部の外傷により眼球運動障害をきたした吹き抜け症候群でも複視は起こります。

さて、視野狭窄ついて考えてみます。たとえば、右の方からの光が見えた時には、右眼は鼻に近い方の網膜に投射されます。左眼は外側の網膜に投射されます。そして、それぞれの映像は各々の視神経を通り、視交叉・側頭葉を経由し、最終的には後頭葉に画像は送られます。その時、右からの光は左に、左からの光は右の後頭葉で認識されます。言い換えると、脳の疾患では、必ず両方の眼に視野欠損(狭窄)が起こっているはずです。網膜剥離や眼底出血・網膜動脈閉塞等の目の病気では、その眼球にしか視野狭窄は起こりません。視野異常を感じたら、右眼・左眼の一方だけなのか、両方とも症状があるのかをしっかり確認することが、眼の病気か脳の病気か判断する重要なヒントになります。

(中野  敬)